- 備考
- #1定公初年、孔子仕えず、故に或る人其の官に居り政を為さざるを疑ふなり。(伊藤仁斎「論語古義」)
- #2書の文、今の古文尚書、君陳篇に見ゆるも、而して孝乎の二字無し、当に此れを以て正と為すべし。
孝なる乎(かな)惟(こ)れ孝とは、孝を美(よみ)するの辞、善く父母に事(つか)ふる者は、必ず兄弟に友(ゆう)にして有政に施及(しきゅう)するを言ふ。
孔子之れを引きて言ふ、
此の如くなれば則ち是れ亦た政を為す、何ぞ必ずしも位に居るを以て、政を為すと為さん、と。(伊藤仁斎「論語古義」) - #3孝友たる者は人の善行なり。
夫れ孰(いず)れか美とせざらん、亦た孰(いず)れか従はざらん。
此の心を以て自ら修(おさ)むれば則ち身修まり、此の心を以て人を治(おさ)むれば則ち人治まり、家国天下と雖も従はざるといふこと莫し。
而れども家に居りて学を講ずる者は、毎(つね)に世に為す有ること能はざるの歎有り。
殊に家に居りて理(おさ)まるを知らず、故に治を官に移す可(べ)し。
奚(なん)ぞ官に居りて政を為さざるを以て慊と為さんや。
孟子曰く、
其の子弟之れに従ふときは則ち孝弟忠信なり、素餐(そさん)せざること、孰(いず)れか是れより大ならん、と。
官に居りて政を為す者と奚(なん)ぞ異(こと)ならん。(伊藤仁斎「論語古義」)