- 備考
- #1温は尋なり。
故(ふる)きを温(たづ)ねて新(あたら)しきを知(し)るとは、旧聞(きゅうぶん)を尋繹(じんえき)して、時(いま)に新益(しんえき)有るなり。(伊藤仁斎「論語古義」) - #2此れ師道(しどう)の甚だ難(かた)きを言ふなり。
人の学を為す、故(ふる)きを温(たづ)ねざれば則(すなは)ち必ず其の能(よく)する所を㤀(わす)れ、新(あたら)しきを知らざれば則ち其の亾(あやう)き所を得ること無し。
葢(けだ)し天下の事は限り無くして、天下の變(へん)は窮まり無し。
苟(いやし)くも能(よ)く旧聞(きゅうぶん)を尋繹(じんえき)して復(ま)た新得(しんとく)有らば、則ち之に應(おう)ずること愈(いよいよ)竭(つ)きず、之を施(ほどこ)して其の可(よき)に当たる、而(しか)る後に以て人の師と為る可し。
夫(そ)れ師たる者は人の模範(もはん)なり。
人材の由(よつ)て成就(じょうじゅ)する所、世道(せどう)の由(よつ)て維持(いじ)する所、韋帯(いたい)の賤(せん)を以て人君(じんくん)と並(なら)び称(しょう)せらる、其の責(せき)甚(はなは)だ重く、其の任(にん)甚だ大なり。
謹(つつし)まざる可けんや。(伊藤仁斎「論語古義」)